その使い心地とリーズナブルな価格で、じわじわとファンが増えている「補聴器カバー」。 実はリオン株式会社の補聴相談室で毎日お客さまと接する一人の女性の提案から始まった商品なのです。 「補聴器カバー」の生みの親である細野枝美さんに、開発から発売までをお聞きしました。

ジムで会話を楽しみたい

写真:細野 枝美様
リオン株式会社 補聴相談室
細野 枝美さん

細野さんが所属していらっしゃるのは、お客さまから聞こえに関する相談を受けている補聴相談室ですよね。そんな細野さんが補聴器カバーの開発に携わるきっかけを教えてください。

お客さまから、「ジムで隣の人と楽しくおしゃべりがしたいけど、汗をかくから補聴器を着けることが出来ない」と言われたのがきっかけです。全てのお客さまに防水補聴器が合うわけではないし、弊社には汗を防ぐカバーが無かったので、なかなかご希望に沿えなくて…。他に半年に一回くらい補聴器が汗で故障して、相談室に修理にいらっしゃるお客さまもいたので、なんとかしたくて洋裁店を営む親に相談し、試作品として補聴器カバーを作ってもらいました。

企業を動かす難しさを痛感

写真:細野 枝美様

まさに家内製手工業ですね(笑)お客さまの反応はいかがでしたか?

ホントに!布地も悩みました。汗を吸うだけでなく、速乾性の高いものを選び、補聴器を置いて型紙を作って…。父が裁断し、母が縫製した試作品を最初は30名ほどのお客さまにお渡ししました。お客さまにモニターになっていただき、何回か試作を繰り返しました。お客さまからは良好な評価を頂きまして、1ヶ所の補聴相談室のお客さまから、これだけ「欲しい」という要望があるなら、全国にもそういうお客さまはいらっしゃるはずだと思って商品化を目指しました。全国規模になりますと両親のみでは追いつかなくなりますので、まず購買課で見積りを取ってもらうところからスタートしました。でも最初から大きな壁が…。なんと見積りの金額が1枚原価1,200円!「高すぎる!」と他の業者を当たってほしいとお願いしましたが、他にありませんと言われました。会社からすれば、いつ商品化されるか分からないものですからなかなか…。ショックでしたね。

持つべきものは友!

写真:細野 枝美様

スタート地点の壁をどうやって打ち破り、量産化へこぎつけたのですか?

なんとかしたいけどツテはないし、父に相談しようと実家へ帰る途中でたまたま友人と会ったので、お茶を飲みながら補聴器カバーの話をしたんです。まぁよくある会社のグチです(笑)。そしたらその友人が「自分の仕事で取引している業者を当たってみてあげるよ」と言ってくれて。さらにはその会社の上司の方まで動いてくださいました。その結果、私の希望に近い金額で量産化できる業者が見つかりました。持つべきものは友!本当に感謝しています。

1㎜の壁

それからトントン拍子に発売までいったのですか?

写真:細野 枝美様

いえいえ。それからも大変な道のりでした。一番苦労したのが縫製です。実は1枚1枚手作業で縫製しています。洋服のように大きいものでしたら縫いしろが1㎜変わったくらいでは気になりませんが、小さい補聴器のカバーですから、縫いしろが1㎜ずれただけで大きさがかなり変わってしまうことが分かりました。いくつも試作しましたが、ベストな縫いしろ通りに縫製するには高度な技術が必要となります。縫製技術が高いところは価格も高いので、お客さまへ提供する価格も上がってしまいます。

写真:細野 枝美様

私はどうしても300円前後で発売したかったので、少しでも縫いやすい型をと友人と一緒に何度も何度も型を書き直しました。その甲斐あって315円という価格でお客さまへご提供できました。補聴器は安価なものではないですし、電池代もかかります。加えてアクセサリー類も高かったら申し訳なくて。とにかく300円台に抑えたかったんです。

お客さまの笑顔が最高のプレゼント!

写真:細野 枝美様

補聴器カバーが発売されてお客さまの反応はどうですか?

ご協力いただいていたお客さまは、私が悪戦苦闘していたことを知っていらっしゃったので、「良かったね!」「買っていくよ!」と言ってくださいました。新たに使用されたお客さまからもご好評をいただいております。お客さまのご要望を受け止めて、それを形にして解決できたことが何よりも嬉しいです。

いつも笑顔で

写真:細野 枝美様

最後に細野さんがお客さまと接するうえで心がけていることは何ですか?

どんなお客さまでも最後は笑顔で帰ってもらえるように心がけています。そのためにはまず自分が笑顔でいることが何より大事だと思っています。